ハダニは、主に植物の葉裏に寄生して汁を吸い、吸われた部分は葉緑素が抜けるため葉色が悪くなります。被害症状が進行すると落葉させ、草花を枯らすことも多いです。
成虫でも0.5mm程度と小さいので見つけにくく、単為生殖が可能なため爆発的に増えることがあるので非常に厄介な害虫です。
この記事では、ハダニの特徴や被害症状、駆除と対処の方法、予防方法について紹介します。ハダニから大切な植物を守り、良好な生育を促すための参考にしてください。
そもそもハダニとは?

ハダニの成虫には足が8本あり、クモの仲間でダニ科に属します。日本には70種類程度のハダニが存在し、吸汁性害虫として扱われています。
ハダニを予防、駆除するためには、ハダニについて基本事項を把握しておくことが重要です。ハダニの生態、発生しやすい植物、繁殖時期と産卵などについて説明します。
ハダニの生態
ハダニは旺盛な繁殖力を持ち、雌は1日に数個~10数個を産み、生涯で50~100個程度を産卵します。ハダニの寿命は一般的に2~4週間程度です。
孵化した幼虫は3度脱皮して成虫になりますが、気温25℃の環境では10日前後で成虫になる固体もあります。
ハダニは、高温乾燥を好み、梅雨明けから9月頃が繁殖のピークです。ただし、水に弱いので降雨時には生息密度が低下します。
ハダニは種類によって、赤色、黄緑色、褐色などの体色がありますが、よく目につくのはリンゴハダニ、ミカンハダニ、カンザワハダニなどの赤色系です。ナミハダニのように黄緑色系のものも多いです。
ハダニが発生しやすい植物
ハダニは、草花、野菜、果樹、花木など、ほとんどの植物に発生しますが、特に柑橘類(リンゴ、ナシなど)、野菜類(キュウリ、ナス、ピーマン)などで被害が多いです。また、観葉植物やラン類、草花にも寄生します。
風通しが悪い、埃が多い、雨が当たらない場所などは、ハダニが発生しやすいので注意が必要です。
ハダニの繁殖時期
ハダニの繁殖時期は、気温が20~30℃になる3月~10月頃で、特に梅雨明けから9月頃にかけて繁殖旺盛になります。高温で乾燥しているのを好むので、気温が上がり、雨が少なくなると活動が活発になるのです。
ハダニは、晩秋から冬にかけて気温が下がると、成虫か休眠卵の状態で越冬します。越冬場所は種類によって違いますが、寒さから身を守れる、樹木の幹の粗皮下や雑草の根元が多いです。
ハダニの産卵
ハダニは、主に植物の葉裏に卵を産み付けますが、葉脈に沿って産み付けられることが多いです。ハダニの雌は、1日に数個~10個程度生み、一生で100個程度を産卵します。
産卵時期は、3月~10月頃の活動期全般になります。ミカンハダニやナミハダニは、適温が維持されれば1年中増殖可能です。
ハダニはクモの一種
ハダニは、ダニ目に分類され、クモやサソリなどの仲間で「狭角亜門(きょうかくあもん)」というグループの一種です。通常、昆虫は6本足ですが、ハダニを含むクモの仲間の足は8本です。
成虫になったハダニは吐糸管から糸を出して風にのって移動したり、寄生する植物に糸で網を張って天敵や風雨から身を守ったりします。
ハダニの被害を受けることで植物に発生する症状

ハダニは葉の汁を吸うので、葉緑素が抜けて植物の光合成を阻害し、植物全体の生育が悪化します。その結果、葉の黄変などの変色、落葉、生育不良などの症状が発生します。
葉の葉緑素が抜けると白い斑点やカスリのような模様が現れ、被害が進行すると葉全体が黄色く変色し、草花では葉が枯れて落ちてしまうこともあるほどです。
花弁からも汁を吸うため、開花時期が短くなり、花色も悪くなることがあるので注意が必要です。果樹では果実の収穫量が減少したり、葉焼けを起こしたりすることもあります。
ハダニの駆除・対処方法

ハダニの駆除・対処方法は、さまざまな条件によって、おすすめの方法が違ってきます。薬剤を使うか使わないか、発生の初期段階か大量発生か、屋内か屋外かなどの条件です。
ここでは、ハダニの駆除・対処方法を6つ紹介しますので、それぞれの条件に合わせて使用を検討してください。
駆除・対処方法1
ハダニの駆除・対処方法として、薬剤を使わない効果的な方法として一番に挙げられるのが定期的な「葉水」です。ハダニは高温で乾燥した環境を好むため、水が苦手です。
葉裏を中心に水を散布することで、ハダニの繁殖を抑制することができます。ただし、多肉植物など乾燥地帯が原産の植物では、葉水で植物が傷んでしまうので注意が必要です。
屋外であれば、強めのシャワーで卵や成虫を水で洗い流すのもおすすめです。屋内の場合は、スプレータイプの霧吹きなどを活用して、こまめに葉水するようにしましょう。
植木鉢やプランターを鉢ごと水に浸けるのも有効です。
駆除・対処方法2
ハダニ発生の初期段階でハダニが少ない場合は、セロハンテープやガムテープなどの粘着性のあるテープに付着させて除去することもできます。粘着力が強すぎるテープを使うと、葉を傷めてしまう可能性があるので気をつけてください。
ウエットティッシュなどで、葉裏を1枚ずつ拭き取っていく方法もあります。このとき、アルコール分が含まれているものは、葉に影響を与えかねないので避けるのが無難です。
いずれにしろ、手作業での除去になるので手間はかかりますが、目視しながら確実にハダニを引き離すことができるので効果は大きいといえます。
駆除・対処方法3
ハダニがついた葉や茎を切り落とすのも効果的な駆除・対処方法の一つです。ハダニの拡散を防止して、植物全体への被害拡大を抑えることができます。
まず、植物全体を観察してハダニの被害範囲を特定し、切り落とす葉や茎を決めましょう。切り落とす部分が過大で、切り落とすことで植物自体にリスクになる場合は、他の方法を検討する必要があります。
切り落とす際は清潔なハサミか剪定ばさみで行い、切り口には雑菌が入らないように殺菌剤か癒合剤を塗布するのがおすすめです。剪定した葉や茎は、他の植物への影響がないように、ビニール袋などに入れて処分してください。
駆除・対処方法4
ハダニが付いた葉裏に、水で薄めた木酢液を定期的に吹きかけるのも駆除・対処方法の一つです。木酢液は、木炭をつくるときに発生する煙を冷却して得られる液体の不純物を取り除いて蒸留したものです。
木酢液は、約90%が水、残りの約10%が酢酸、フェノール類、アルコール類などの有機化合物で構成されています。これらの成分がハダニの活動を抑制して増殖を減少させます。
木酢液の独特なニオイもハダニを寄せ付けにくくするのですが、希釈倍率によってはニオイが強すぎて屋内での使用は難しいです。どうしても使用したいときは換気が欠かせません。
駆除・対処方法5
ハダニの天敵を利用し、ハダニを捕食させて駆除・対処する方法もあります。ハダニの天敵として利用されるのが、ミヤコカブリダニやチリカブリダニなどのカブリダニ類です。
天敵の住処となるバンカー植物で、天敵を集め定住させます。カブリダニ類のバンカー植物は、チトニア、麦類、メランポジューム、ダリアなどです。
天敵による駆除・対処方法では、ハダニの発生初期に天敵を導入すると、より効果的です。天敵利用により、農薬などの薬剤使用量が減り、環境への負荷を軽減することが可能になります。
駆除・対処方法6
ハダニ発生の範囲が広く大量に発生したり、対処に緊急性があったりする場合は、薬剤散布による駆除・対処方法をとるのが一般的です。最近では、ミヤコカブリダニなどの天敵成分を活用した「天敵殺虫剤」も流通しています。
薬剤散布は発生初期の使用がより効果的で、できる限り定期的に散布することが求められます。ハダニは薬剤耐性が発達しやすいため、複数の薬剤をローテーションで使用するのがポイントです。
薬剤散布と合わせて、風通しを良くする、周囲の雑草を刈り取るなどの環境対策を行うと相乗効果を生みだします。
ハダニの予防方法

ハダニの発生や増殖を予防するためには、ハダニが嫌がる環境をつくることが有効です。また、ハダニを駆除・対処する方法は予防においても効果を発揮します。
ハダニの予防方法について紹介します。
予防方法1
ハダニは、高温になりやすく乾燥している場所を好みます。そのため、ハダニが好む環境となっている場所に注意をはらい対処することで、ハダニの発生や増殖を予防できます。
雨があたらないベランダや軒下、庭や外構の死角となるような風通しの悪い場所、マルチング材などを敷き詰めている地表面などは特に注意すべき場所です。また、ビニールハウスなどの栽培施設も高温が維持されているのでハダニが発生しやすくなります。
これらの場所では頻繁に植物をチェックしながら、事前に定期的な散水や防除を行って、ハダニの発生を予防していくことが重要です。
予防方法2
ハダニの駆除・対処で有効な葉水は、予防でも効果を発揮します。
ハダニは乾燥を好み水に弱いので、植物への水やりでは、葉裏まで丁寧にしっかりと水をかけることがハダニ発生の予防となります。
気温が上がり乾燥もする時期は、葉水による湿度の維持がハダニの発生を予防するだけでなく、埃も除去できるのでおすすめです。特に、乾燥しやすい屋内で育てている植物は、定期的な葉水は欠かせません。
屋外で育てている植物は、シャワーなどの流水で葉の表裏両面を洗い流すように葉水すると効果的です。
予防方法3
植物の葉に埃が付いていると乾燥に繋がりやすいため、埃をこまめに拭き取って乾燥を防ぐことが、ハダニ発生の予防になります。
特に屋内で育てている植物は、1週間に1回程度は優しく丁寧に葉を拭き取るようにしてください。ただし、マイクロファイバークロスなど、素材によっては葉を傷めてしまう可能性があるので注意が必要です。
屋内の埃やチリがたまりやすい場所に置いている植物は、たまに移動させて育てていくことをおすすめします。埃やチリがたまりやすい場所とは、部屋の隅や角、電化製品や大型家具の周囲、寝室などです。
予防方法4
薬剤の使用は、ハダニ発生の予防にも効果を発揮します。ハダニの予防に有効な薬剤は多く、種類もさまざまです。
おすすめなのは、ハダニ専用の殺ダニ剤ですが、発生状況で選ぶ必要があります。卵→幼虫→成虫のどの段階に効果があるのかを確認し、それに合わせた薬剤を使用しましょう。
また、ハダニは薬剤耐性が強いため、数種類の薬剤をローテーションで使用するのが効果的です。
ハダニを大量発生させないためには、予防と早期発見、素早い対処が重要です。例えば、初期段階でハダニの数が少ないからと油断していると、短期間で爆発的に繁殖して後悔することになってしまいます。
まとめ

ハダニは0.5mm程度の大きさで、主に植物の葉裏に寄生するため、なかなか確認しづらい害虫です。また、雌だけでも増えることができるので、短期間で大量に増える可能性があるので厄介です。
このハダニの弱点は水なので、葉水をたっぷり与えるだけでも有効な防除となります。ハダニが大量に発生してしまったら、ハダニ駆除剤を適切に使用して対処しましょう。
大切な植物をハダニから守るため、植物がある場所の環境チェックを習慣にしておくことも重要です。