天然芝と地表の間に溜る堆積物(サッチ)を除去するサッチング作業は、天然芝のメンテナンスに欠かせない重要な作業です。サッチングを怠りサッチが堆積し過ぎてしまうと、芝生の生育を阻害してしまいます。
そこで、今回の記事では、サッチングをする理由やサッチングのやり方を解説します。サッチングに使う道具の種類や、各道具の特徴や、サッチングを正しく行うポイントなどを詳しく解説しますので、天然芝を美しく健やかに保ちたい方は、ぜひご一読ください。
芝生のサッチングとは?

芝生のサッチングは、芝生に堆積するサッチと呼ばれる堆積物を除去する作業です。サッチとは芝の枯れた葉や古い茎、根、刈り草などが土壌の表層に溜まったものです。芝生を間近でよく観察すると、芝の緑色の部分と地面の間に、枯草のような薄茶色をした層があるのが分かります。この薄茶色の部分がサッチです。
サッチは芝が生長して新陳代謝を繰り返す中で必ず排出されるものですが、芝の葉・茎・根にはリグニンという物質が含まれており、微生物が分解しにくいという特徴があります。芝生の生育が旺盛なほどより多くのサッチが発生しますが、分解が追い付かないため、サッチがどんどん堆積していくのです。
サッチングと芝刈りはどちらが先?
サッチングをするタイミングは芝刈りの後でも前でも大丈夫ですが、どちらかというと芝刈り前の方がおすすめです。サッチングをする前に芝を短く刈る低刈りをしておくと、サッチング作業がしやすくなります。
芝生のサッチングをやらないとどうなる?

芝生のサッチングを怠ると、どのような害があるのでしょうか。ここからは、サッチングが溜まることで起きることを解説します。
土壌の通気性・水はけが悪くなる
サッチングを怠って厚くなったサッチ層は、スカスカしたスポンジのように水分を多く含みます。雨が降った後の雨水は土壌に浸透していきますが、水を含んだサッチ層が水分の浸透を妨げ、水はけを悪くします。また、芝生と土壌の間に湿ったサッチが堆積していることで、風通しが妨げられ通気性も悪くなります。
害虫・病原菌の発生
湿ったサッチ層が土壌と芝生の間に堆積していると、病害虫が発生しやすい環境を作ってしまいます。高温多湿時で発生しやすいラージパッチ(ブラウンパッチ)・さび病・赤焼病にかかったり、コガネムシ・蚊・ユスリカ・スジキリヨトウなどの害虫が発生したりして、芝生や庭木の生育を阻害します。
芝生のサッチングのやり方
サッチは芝生の生長に伴って自然と堆積するものですが、溜まり過ぎると芝生の生長を阻害してしまいます。サッチが堆積し過ぎないよう、定期的にサッチングでサッチをしましょう。ここからは、サッチングをする4つの方法について解説します。
方法①熊手(レーキ)を使う

熊手(レーキ))は、落ち葉や土などをかき集める園芸用具です。伝統的な熊手は竹素材ですが、現在ではプラスチック、ファイバーグラス、ステンレススチール製など、さまざまな素材のものがあります。形状は竹製の熊手を模した扇状のものと、トンボのようなT字型のものがあります。サッチングに使う場合は、爪が細くて強度が高いスチール製のものがおすすめです。
熊手を使ったサッチングでは、まず熊手の先を芝生に食い込ませます。手前に向かって細かく熊手を引きながら、少しずつサッチを集めていきます。 集めたサッチはゴミ袋やガーデンバッグに回収し、自治体のルールに従って捨てましょう。
方法②サッチングマシンを使う

サッチングマシンは、サッチを取り除くための専用の機械です。見た目は小型の芝刈り機のような形をしており、ローラー状の刃が回転しながらサッチを掻き出します。
動力は電気を使う電動式と手動で押して使う手動式の2種類があります。また、ガソリン駆動や電動の芝刈り機の中には、サッチング刃を取り付けられてサッチングマシンとしても使える商品もあります。
サッチングマシンは、芝刈り機のように芝生の上を押していくだけで、刃が回転して自動的にサッチを掻き出します。掻き出されたサッチは、サッチングマシン上部に取り付けられた集積箱の中に自動的に集められます。
方法③サッチ分解剤を撒く
サッチ分解材とは、バチルス菌という微生物が入っておりサッチの分解を促進する土壌改良剤です。バチルス菌は土壌菌の一種で、土壌、植物、空気中など、自然界のどこにでも存在しています。酸素がある環境で活発に増殖し、有機物を分解する酵素を分泌するので、枯草菌とも呼ばれています。
サッチ分解材の使用法は簡単で、芝生の上にパラパラと均等に散布し、水をまくだけです。3月~10月の芝生の生長期に、年に2~3回ほど散布するのが理想的です。土壌にバチルス菌が増えることでサッチの分解が促進され、分解の過程で発生した糖やアミノ酸は、養分として芝の根から吸収されます。
方法④芝焼きをする

芝焼きは芝生の表面を火で焼いて、枯れた芝やサッチ層を除去する作業です。芝焼きができるのは高麗芝などの暖地型の芝で、芝の休眠期間で新芽が出る前の2月~3月上旬頃に行います。火を使うため一般的な住宅街で行うことは難しく、条例などで無許可の芝焼きは禁止されている自治体も少なくありません。必ず自宅周りの環境や自治体のルールを確認してから芝焼きを行いましょう。
芝焼きは芝が乾燥していて、風の弱い日を選んで行います。必要以上に燃え広がらないよう、燃やしたいエリアの周囲にあらかじめ散水しておきましょう。火を付ける前に、熊手を使ってサッチをある程度掻き出しておき、バーナーを使って芝生の表面を焼いていきます。消火用のバケツやホースを準備しておき、万が一火が大きくなり過ぎたら速やかに消火しましょう。
芝生のサッチングに使用する道具の選び方

芝生のサッチングを除去する道具には、それぞれ特徴があります。それぞれの特徴を比較しながら、芝生のサイズやサッチングの堆積具合を考慮して適切な道具を選びましょう。
熊手(レーキ)の特徴
サッチングに使う熊手は丈夫で錆びないステンレススチール製のものがおすすめ。形状は爪が細くて長い扇形のもの、力強くサッチを掻き出せるT字型のものがありますが、芝の状態や種類に合わせて使いやすい方を選びましょう。
熊手はステンレス製のものでも2,000円~4,000円程度と価格が比較的安く、電源が不要でどこでも使えるのが魅力です。デメリットは、手動でサッチングをするためにある程度の体力が必要なことと、芝生エリアが広範囲の場合は多大な労力がかかるということです。
予算が少ない方や、狭いエリアのサッチングを行いたい方には、熊手がおすすめです。
サッチングマシンの特徴
サッチングマシンは電動式のものと手動式のものがあります。手動式のものは1万円前後、電動式のものは3万円前後が相場です。サッチングマシンを選ぶ時は、まず手動式にするか電動式にするかで選びましょう。
手動式のメリットは比較的安価で、コンパクトなこと。熊手に比べるとサッチングの作業が楽に行えますが、電源を必要としないのでどこでも手軽に利用できます。電動式のメリットは、なんと言ってもパワフルなこと。芝刈り機と同じ要領で芝の上を走らせるだけで、堆積したサッチングがスムーズに除去できます。刃を取り換えるとエアレーションも行えるサッチングマシンや、芝刈り機でサッチングが行える製品もあるので、芝生のトータルケアをしたい方におすすめです。
サッチ分解剤の特徴
サッチ分解材は、「芝生改良剤」「サッチ分解促進剤」「土壌改良剤」など、さまざまな名称で複数のメーカーから販売されています。各製品の使用方法、使用時期や頻度、施肥量の目安などを確認し、使いやすいものを選びましょう。施肥量の目安は1kgあたり約25~35平米で、1kgあたりの価格は600円~1,500円で販売されています。
サッチ分解材は、使用してから効果が表れるまで3~4ヶ月かかります。しかし年に2~3回まくことで、サッチが堆積するのを防ぎ、分解されたサッチは有機肥料として芝生の生育を助けてくれます。熊手やサッチングマシンのような即効性はないものの、芝生の生育環境を根本的に改善する方法としておすすめです。
芝生のサッチングに最適な時期と頻度

芝生のサッチングに最適な時期と頻度は、サッチングの方法によって異なります。
熊手とサッチングマシンの場合
熊手やサッチングマシンを使って物理的にサッチを除去する場合は、芝の生育が始まる3~5月頃と、夏の生育が終わった9~10月の年2回がおすすめです。春のサッチングでは冬に枯れた芝や古い根を取り除き、芝が活発に生長する夏に入る前に、健康的に芝が育つ環境を整えます。秋のサッチングでは夏の生長期に溜ったサッチを取り除き、冬の休眠期に供えます。
サッチ分解材の場合
サッチ分解材は、基本的には芝生の生育期間中(3~10月にかけて)に2~3回程、時期をあけて散布します。
上記はあくまでも目安で、サッチの厚みが1cm以上になると芝生の生育に悪い影響を及ぼし始めます。以下の状態が確認されたら、サッチが堆積し過ぎている可能性が高いので、サッチングをするようにしましょう。
- 雨が降った後に雨水が地面に浸透しにくく、芝が湿った状態が続く
- 芝生が黄色く変色している
- 芝生の上を歩くとふわふわと足が沈む
- 苔が発生している
芝生のサッチングを行う際のポイント

芝生の健やかな生長に欠かせないサッチングですが、やりすぎるとかえって芝生を傷つけてしまうこともあります。サッチングで失敗しないために、以下の点に気を付けましょう。
力をかけすぎない
熊手や手動式のサッチングマシンを使う場合、力加減が重要です。高麗芝などの日本の芝の多くは、地表や地下の浅いところに「ほふく茎」を伸ばして生長していきます。サッチング作業を早く済ませようと力まかせに一気にサッチングをしていくと、ほふく茎や根を傷めかねません。力をかけ過ぎずに、様子を見ながら少しずつ作業を進めましょう。
芝の根が浅い箇所はサッチングしない
日当たりや水はけの良し悪しなどが影響して、芝生の生長具合が均一ではないことも少なくありません。芝の根が浅い箇所は他の場所と比べると生育が悪い場所なので、他と同じ要領でサッチングをしてしまうと、サッチを取り過ぎて根を傷めてしまう可能性があります。また芝生を貼って1年目ぐらいまでは根がしっかり生長しておらず、サッチングでダメージを受けてしまう可能性があるため、サッチングを控えた方が良いでしょう。
全てを一度にサッチングはしない
サッチング作業を一度始めると、ついついサッチを全部取り除きたくなってしまうもの。しかし、堆積したサッチを全て取り除いてしまうと、芝のほふく茎や根が剥き出しになって日焼けしてしまったり、熊手やサッチングマシンの刃で傷つけられたりしてしまいます。
サッチは1cm以上堆積すると芝生の生育に悪影響が出ると言われていますが、逆を言えば1cm以内になるまで除去すれば十分です。ほふく茎や根を保護する意味もあり、1cm以内であれば多少のサッチ層は残しておくのがベストです。また、初めてのサッチングで分厚いサッチ層を除去する時も、一度に全てのサッチ層を取り除くのではなく、複数回に分けて徐々にサッチ層を減らしていきましょう。
芝生の手入れはプロへ依頼がおすすめ
芝生のサッチ層を除去するサッチングについて解説しましたが、熊手や手動式のサッチングマシンを使ってサッチを取る作業は、体力のいる作業で時間もかかります。電動式のサッチングマシンを使えば、熊手や手動式に比べるとサッチ取りが簡単ですが、マシンの購入費用や置き場所を考慮して、購入をためらう方も多いでしょう。
サッチングを自分でするのが難しいと感じる方は、芝生の手入れの専門業者にサッチングを依頼するのがおすすめです。
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まとめ
芝生の健やかな生育に欠かせないサッチングについて詳しく解説しました。サッチングをする方法には、熊手やサッチングマシンを使って物理的に除去する方法と、サッチ分解材を使って微生物の力でサッチの分解を促進させる方法があります。サッチの堆積具合や芝生の状況によって、適切なサッチング方法を選んでください。
美しい芝生を保つためには定期的なサッチングが欠かせませんが、自分でするのが大変だと感じる場合は、プロの業者に依頼するのもおすすめです。













