生垣の剪定方法について。木の種類別に剪定方法や適した時期、必要な道具をご紹介!
監修者
氏永 勝之
smileグループCEO 株式会社ガーデンメーカー 代表取締役 愛知農園植木苗木株式会社 専務取締役 一般社団法人ガーデンビジネス協会 代表理事
生垣にとって、剪定は大切なメンテナンスです。
というのは、基本的に生垣は人目に付きやすい場所に立っているからです。
家の前や庭の周りに立てた生垣が乱れた状態では、家の印象が悪くなってしまいます。
枝が伸びすぎて道路に飛び出してしまうと、歩行者の邪魔にもなってしまうでしょう。
また、剪定を怠っている生垣には、病気や害虫が発生しやすくなります。
そのため生垣には、庭木よりもこまめな剪定が必要となるのです。
そして、剪定に適した時期や方法は、樹種によって異なります。
この記事では、生垣に人気の樹種16種の、剪定に適した時期や方法を紹介していきます。
生垣の剪定に適した時期を樹木の種類別に紹介
基本的には、生垣には年に1~2回の剪定が必要です。
生垣に人気の樹種別に、それぞれの剪定適期と剪定方法を紹介していきます。
カイヅカイブキ
科名:ヒノキ科
属名:ビャクシン属
分類:常緑針葉樹
剪定の時期:5月頃、10月頃
使用する道具:剪定バサミ、刈り込みバサミ、ヘッジトリマーなど
カイヅカイブキは刈り込みに強い樹種です。
樹形を整える程度の剪定なら、時期はそれほど選びません。
年に1回は必要となる強い剪定は、5月頃に行いましょう。
新しい芽が出る時期に刈り込むことで、夏に大きく育ちすぎることを抑えられます。
10月にもう一度刈り込んでおくと、冬の間もきれいな樹形を維持できます。
ただし、この時期に葉を落とし過ぎると、寒い時期に光合成できなくなってしまうことも。
刈り込みすぎると葉が赤く変色することもありますので、ほどほどに剪定を行いましょう。
シラカシ
科名:ブナ科
属名:コナラ属
分類:常緑広葉樹
剪定の時期:5~6月、10~11月
使用する道具:剪定バサミ、刈り込みバサミ、剪定ノコギリなど
シラカシの剪定は、真夏と真冬は避けましょう。
生育の良い真夏に剪定すると、シラカシは切られた分を取り戻そうとかえって枝を伸ばしてしまうからです。
また、シラカシは常緑樹なため、真冬に葉を落としてしまうと光合成できなくなってしまいます。
シラカシの剪定は、5~6月と10~11月が適期です。
5~6月には、強め剪定します。伸びすぎた枝や樹形を乱す枝、折れた枝などを取り除きましょう。
樹高を高くしたくないときは、主幹の先を切り取る「芯止め」を行います。
10~11月の剪定は、混み合った枝の整理程度で十分です。伸びすぎた枝がある場合は、軽く刈り込むと良いでしょう。
アラカシ
科名:ブナ科
属名:コナラ属
分類:常緑広葉樹
剪定の時期:6~7月、11~12月
使用する道具:剪定バサミ、刈り込みバサミ、剪定ノコギリなど
アラカシは、放っておくと太陽を求め、上部ばかり大きく育ちます。
下部に枝を伸ばさなくなりスカスカになってしまうので、年に2回は剪定を行いましょう。
1回目の剪定適期は、成長が落ち着く6~7月です。伸びすぎた枝を刈り込んで、生垣の表面を整えます。
アラカシには、内側の枝が枯れていく性質があるので、枯れた枝を取り除く剪定も行いましょう。
内側の風通しや日当たりが良くなって、病気や害虫の予防につながります。
2回目の剪定は、11~12月に行います。
不要な枝を取り除き、乱れた樹形を整える程度に軽く刈り込んでおきましょう。
レッドロビン
科名:バラ科
属名:カナメモチ族
分類:常緑広葉樹
剪定の時期:3~4月、6月、9月
使用する道具:剪定バサミ、刈り込みバサミ、ヘッジトリマーなど
赤い葉が印象的なレッドロビン。刈り込みに強く丈夫で育てやすい樹種ですが、剪定を怠るとすぐに樹形が崩れてしまいます。ですから年に2~3回は、剪定を行うようにしましょう。
3~4月には、風通しを良くするための透かし剪定と、生垣の表面を整える刈り込み剪定を行います。
6月の剪定では、余分に伸びた枝を付け根から切り新芽の成長を促進させます。
花を楽しみたいときは、花芽を残すよう気を付けましょう。
9月に行う剪定では、伸びすぎた枝の整理をします。不要な枝を取り除くことで、生垣全体に栄養がいきわたりやすくなります。
トキワマンサク
科名:マンサク科
属名:トキワマンサク属
分類:常緑広葉樹
剪定の時期:5~6月、7~8月
使用する道具:剪定バサミ、刈り込みバサミなど
トキワマンサクは、萌芽力の非常に強い樹種です。生垣として植えるなら、定期的な強剪定が必要となります。
枝葉が増えすぎると樹形が崩れてしまいますし、病害虫が発生しやすくなるからです。
5~6月には、間引き剪定を行いましょう。増えすぎた枝や葉を減らし、風通しと日当たりを良くします。
6月下旬になると花芽が付き始めるので、その前に剪定を終わらせておくことをおすすめします。花芽を刈り取ってしまったら、花が咲かなくなるからです。
7~8月には、伸びすぎた枝を切って樹形を整えます。混み合った枝があれば、一緒に整理しておきましょう。
マキ
科名:マキ科
属名:マキ属
分類:常緑針葉樹
剪定の時期:5月、9~10月
使用する道具:剪定バサミ、刈り込みバサミ、ヘッジトリマーなど
マキは、比較的成長の遅い木ですが、放置すると10m以上まで育ちます。
枝が縦横無尽に生える性質があり、樹形が乱れやすいため、年2回は剪定することをおすすめします。
1回目の剪定は、5月頃が適期です。風通しを良くするために透かし剪定を行って、生垣の内側の環境を整えましょう。
また、飛び出した枝葉を取り除く刈り込み剪定も行います。
マキの刈り込み剪定のポイントは、上部をきれいに刈り揃えること。ヘッジトリマーでさっと刈り込んだ後、刈り込みバサミで仕上げると、美しく平らに仕上がるでしょう。
9~10月にも刈り込みを行えば、すっきりした樹形をキープできます。
マサキ
科名:ニシキギ科
属名:ニシキギ属
分類:常緑広葉樹
剪定の時期:5~6月、9~10月
使用する道具:剪定バサミ、刈り込みバサミ、剪定ノコギリなど
マサキの生垣の剪定は、年に2回行います。
1回目の剪定は、5~6月。梅雨に入ると病害虫が発生しやすくなるため、その予防のために行います。
生垣の内側に生えている不要な枝を処分して、通気性と日当たりの良い衛生的な環境を作りましょう。
そして2回目の剪定は、9~10月頃に行います。生垣のフォルムを整えるよう、飛び出た枝や葉を刈り込みましょう。
日差しの強い7~9月と、冬の剪定はNGとされています。
新芽が直射日光に負けてしまったり、寒い時期に光合成ができなくなったりして枯れてしまうことがあるからです。
また、6月に咲く花を楽しみたいときは、開花前の剪定は避けておきましょう。
キンマサキ
科名:ニシキギ科
属名:ニシキギ属
分類:常緑広葉樹
剪定の時期:5~6月、9~10月
使用する道具:剪定バサミ、刈り込みバサミ、剪定ノコギリなど
キンマサキはマサキの一種です。剪定の適期や頻度は、マサキと同じく初夏と秋ごろの年に2回となっています。
剪定の方法もマサキと同様です。
5~6月の剪定は、やや強めに行います。
枝葉を減らして葉と葉の間にすきまをつくり、混み合った枝も整理していきましょう。
風通しの良い状態を作り、梅雨に発生しやすい病害虫を予防するためです。
9月~10月の剪定は、比較的軽めに行います。飛び出した枝や葉を切りそろえ、生垣の表面をきれいに整えましょう。
プリペット
科名:モクセイ科
属名:イボタノキ属
分類:常緑~半常緑樹
剪定の時期:2~3月、6~7月
使用する道具:刈り込みバサミ、剪定バサミなど
プリペットは、非常に成長の早い樹種です。しかも枝を放射状に伸ばすため、樹形がくずれやすいという特徴があります。
さらに、剪定せずに放置すると害虫が発生することも。ですから最低でも年に1回は、しっかり剪定しておきましょう。
真夏の暑い時期さえ避ければ、剪定の時期にはそれほどこだわらなくてもかまいません。
花を楽しみたいなら花の時期を、実を楽しみたいなら実の時期を避けて剪定すると良いでしょう。
シルバープリペット
科名:モクセイ科
属名:イボタノキ属
分類:常緑~半落葉広葉樹
剪定の時期:2~3月、6~7月
使用する道具:剪定バサミ、刈り込みバサミなど
シルバープリペットは、斑入りの葉をつけるプリペットです。ですから剪定の時期や方法はプリペットと共通しています。年に1度は剪定し、樹形と環境を整えましょう。
シルバープリペットの剪定には、「先祖返り」を防ぐという目的もあります。
先祖返りとは、品種改良で生まれた樹種から改良前の品種の特徴が出てくること。シルバープリペットからは、斑の入っていないプリペットの葉が出てくることがあるのです。
プリペットの葉をそのままにしていると、斑入りの葉はどんどん少なくなりシルバープリペットではなくなってしまいます。剪定の際にプリペットの葉に気付いたら、しっかり取り除いておきましょう。
ヒイラギモクセイ
科名:モクセイ科
属名:モクセイ属
分類:常緑広葉樹(花木)
剪定の時期:3~4月、11月
使用する道具:剪定バサミ、刈り込みバサミなど
ヒイラギモクセイには、年に2回の剪定を行います。剪定せずに放置すると、脇芽が増えなくなるからです。
脇芽が生えないと、葉の密度は低くなり目隠し効果が薄くなってしまいます。生垣を密に保つために、しっかり刈り込みを行いましょう。
ヒイラギモクセイは7月頃に花芽を付けるため、その時期の刈り込みは避けましょう。
新芽が出る前の3~4月と、花の終わる11月が剪定の適期です。
キンモクセイ
科名:モクセイ科
属名:モクセイ属
分類:常緑広葉樹
剪定の時期:3~5月、10月下旬~12月上旬
使用する道具:剪定バサミ、刈り込みバサミ、剪定ノコギリ、ヘッジトリマーなど
生育旺盛なキンモクセイは、放置すると10m近くまで大きく育ちます。
上に伸びれば伸びるほど、下部には枝が生えなくなりスカスカになってしまうので、適宜剪定して切り詰めましょう。
花芽を付ける2~4月には、透かし剪定を行います。不要な枝を取り払い、生垣の環境を整えるためです。
11月頃には、樹形を整えるために刈り込み剪定を行います。成長の早い上部はしっかり刈り込んで、下部は軽めに刈り込むと良いでしょう。
サザンカ
科名:ツバキ科
属名:ツバキ属
分類:常緑広葉樹
剪定の時期:3~4月、9~10月
使用する道具:剪定バサミ、刈り込みバサミなど
サザンカは、比較的成長の遅い樹木です。
そのわりには枝は良く伸びるので、定期的に枝を刈り込んで樹形を整える必要があります。
刈り込み剪定に適しているのは、花が咲き終わってから花芽が付くまでの期間。3~4月がベストシーズンです。
9~10月の剪定は、樹形を整える程度に行います。花芽を切り落とし過ぎないように気を付けましょう。
また、果実を付けてしまうとそちらに養分を奪われてしまうので、花が終わったら子房ごと摘み取ることをおすすめします。
ツゲ系
科名:ツゲ科
属名:ツゲ属
分類:常緑広葉樹
剪定の時期:6月、9月~10月
使用する道具:剪定バサミ、刈り込みバサミ、ヘッジトリマーなど
ツゲは、強い萌芽力を持つ樹木です。樹形が乱れやすいため、年に2回は剪定を行いましょう。
成長の落ち着く6月には、刈り込んで形を整えます。
この時期のツゲは太目の枝を切り落としても、すぐに新芽が生まれるほど元気です。ですから適度に大胆に、枝を切り込んでもかまいません。
上部と下部の枝の伸び方に差があるため、バランスを調整しながら刈り込みます。上部は深く、下部は浅めに選定して、重心を低くするよう心がけましょう。
9~10月には、樹形を整えるための剪定を行います。休眠期へ入る前に整えておけば、きれいなまま冬を越せます。
ボックスウッド
科名:ツゲ科
属名:ツゲ属
分類:常緑広葉樹
剪定の時期:5~6月、10月、厳冬期以外ならいつでも
使用する道具:刈り込みバサミ、剪定バサミ、ヘッジトリマーなど
ボックスウッドの別名はセイヨウツゲ。
新芽が丈夫で刈り込みに強いため、トピアリーにもよく使用される樹種です。
成長はそれほど早くないものの、枝が伸びやすい特徴を持っています。
枝が上に伸びると下部が透けてくるため、密度の高い生垣を保つためには適宜剪定を行いましょう。
5~6月の剪定では、剪定バサミやヘッジトリマーで樹形を整えます。
風通しが悪いと害虫が発生しやすくなりますので、内側の不要な枝を取り除いてすっきりさせましょう。
樹形の乱れを整えるための剪定は、厳寒期以外ならいつでも実行可能です。
常緑性ツツジ系
科名:ツツジ科
属名:ツツジ属
分類:常緑広葉樹
剪定の時期:5~6月
使用する道具:剪定バサミ、刈り込みバサミなど
ツツジには、落葉性のものもありますが、生垣には常緑性ツツジがおすすめです。
常緑性ツツジの剪定は、5~6月が適期とされています。
6月中旬ごろから花芽を付け始めるため、それまでに剪定を終わらせておきましょう。
刈り込み剪定では、その年伸びた分だけを刈り込みます。
また、不要な枝を取り除く「間引き剪定」も行って、生垣の環境を衛生的に整えましょう。
剪定に必要な道具
剪定に使用する道具には、次のようなものがあります。
・剪定バサミ
・刈込みバサミ
・剪定ノコギリ
・ヘッジトリマー(剪定バリカン)
それぞれ詳しく紹介していきます。
剪定バサミ
剪定バサミは、もともとは果樹剪定用の道具でした。
軽い力で太い枝も切れるため、庭木や盆栽などの剪定にも使われるようになったとされています。
ハンドルの間にバネが付いているため、開閉が楽で太い枝でも簡単に切り離せます。
さまざまなサイズがありますが、手のひらに収まるサイズが使いやすいでしょう。
刈り込みバサミ
刈り込みバサミは、柄と刃の長いハサミです。
庭木の手入れをしている植木屋さんが持っているイメージがあるかもしれません。
刃が長いため、広い面積を一気に切れるのがメリットです。
いろいろなサイズがありますので、使いやすいものを選びましょう。
剪定ノコギリ
剪定ノコギリは、太い枝や根を切るのに便利なアイテムです。
剪定バサミでは切れない太さでも、剪定ノコギリならあっという間に切り落とせます。
刃の形状にはさまざまなものがありますが、太い枝には目の粗いタイプが使いやすいでしょう。
細い枝の剪定に使うなら、目の細かいタイプがおすすめです。
ヘッジトリマー(剪定バリカン)
ヘッジトリマーとは、生垣や樹木の面を均一に刈り込むための道具です。
別名は剪定バリカンで、剪定用の道具ともいえます。
コード式とコードレス式がありますが、屋外で使うならコードレスが便利でしょう。
コード式を使用するなら、コードが足に絡まないよう気を付けましょう。
まとめ
生垣には剪定が必要です。
放置すると見た目が悪くなりますし、病害虫の原因となるからです。
剪定の適期は樹種によって異なります。
どの時期にどんな剪定を行うべきかをチェックして、美しい生垣の健康を保ちましょう。