庭木の冬囲い・雪吊りって業者に依頼すべき?自分で冬囲い・雪吊りする方法と、メリット・デメリットを解説
監修者
氏永 勝之
smileグループCEO 株式会社ガーデンメーカー 代表取締役 愛知農園植木苗木株式会社 専務取締役 一般社団法人ガーデンビジネス協会 代表理事
冬が近づくと、雪の多い地域では庭木の冬囲いが必要となります。
冬囲いとは、雪の重みで枝が折れてしまったり、冷たい風に吹かれて庭木が枯れてしまったりすることを避けるための対策です。
冬の間も葉を茂らせる常緑樹や寒さに弱い樹種、そして植えて間もない若い木にとっては特に大切な冬囲い。
庭木の大きさによっては、DIYでの設置も可能です。
この記事では、自分で行う冬囲いや雪吊りの方法と、必要な道具を紹介していきます。
また、冬囲いや雪吊りを業者に依頼した場合のメリット・デメリットや、費用相場をまとめました。
庭木の冬囲いを自分で行うか、それとも業者に依頼するかで悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。
冬囲いや雪吊りの種類と自分で設置する方法
冬囲いとは、雪の重みや冷たい風から樹木を守る対策です。いろいろな種類がありますが、庭木の種類や大きさに適した冬囲いを選びましょう。
DIYでも取り入れやすい、冬囲いの種類と方法を紹介していきます。
縄巻の方法
縄巻は、もっともシンプルな冬囲いです。低木に施しやすい方法で、枝が細くてやわらかな樹木に適しています。
①枝を幹に近づけるようにまとめながら縄で縛る
②下の方から順に、2~3カ所縛っていく
傘を畳むようなイメージで枝をすぼめて縄を巻き、適度に力を加えて縛ります。下の方から順番に、50cmほどの間隔で縄を巻いていきましょう。
雪が積もると予想される高さより、少し高めの位置まで巻いておくと安心です。庭木を1本の太い木のようにまとめることで、木の強度をアップさせます。
さらに強度を増したいときは、支柱を使用すると良いでしょう。幹のそばに竹や丸木などを立て、縄で一緒に縛ります。支柱があれば庭木はよりしっかりサポートされ、雪の重圧にも耐えやすくなります。
竹囲いのやり方
竹囲いは、苗木にも使用される冬囲いです。竹や丸木などで庭木を囲い、雪が積もるのを防ぎます。
竹囲いは、次の要領で行います。
①枝をまとめて縄で縛る
②庭木を囲むように支柱を数本立てる
③支柱の先を中央に集め、縄で結ぶ
④支柱の周りに縄を巻きつけ補強する
庭木を支柱で囲む前に、下縛りを行います。縄巻の要領で、枝を畳むように縛って固定しましょう。
次に、庭木の周りに支柱を立てます。
支柱の本数は、庭木の大きさで変わります。直径30cmほどの庭木には3本が目安。それ以上大きな庭木なら、支柱の数を増やしましょう。
上から見たときに、支柱が3本なら正三角形、4本なら正方形になるようにバランスよく配置してください。
支柱を地面にしっかり突き刺して、庭木のてっぺんの少し上で支柱の先をまとめます。縄でしっかり結んだら、支柱の周りにも縄を巻いて補強しましょう。
縄巻のように一段ずつ巻いても良いですし、ヘビが巻き付くようにグルグル巻きつけてもかまいません。
どちらの場合も根元に近いほうからスタートし、雪が積もる高さより高い位置まで巻き上げます。
縄先が支柱へ当たるごとに支柱にひと巻きして、しっかり固定しましょう。縄の隙間が狭いほど、雪をしっかり防げます。
こも巻きの方法
こも巻きとは、害虫駆除のための作業を指すことが一般的です。でも、冬囲いの一種としてこもやネットを巻く作業をこも巻きと称することもあります。
冬囲いのこも巻きは、次の手順で行いましょう。
①庭木を縄巻、または竹囲いする
②こもやネットで包み、縄を巻いて固定する
こも巻きは、縄巻や竹囲いとセットで行う作業です。縄巻や竹囲いを施した庭木をむしろやネットで包み、冷たい風を防ぎます。
こも巻きが必要となるのは、バラのように寒さを苦手とする樹種や、移植して1年未満の庭木です。
こもで根元まで包んでしまうと通気性が悪くなり蒸されてしまうので、根元は30cmほど開けておきましょう。
棚囲いの作り方
棚囲いは、ツツジやハイネズといった低木の植え込みに使用される冬囲いです。
次のような手順で、植込みに屋根を作るように設置します。
①植え込みの四隅に杭を立てる
②2~3本の横木を縄で結束する
③横木にむしろをのせて縄で固定する
杭と横木を組み合わせて作る棚囲いは、やや難易度の高い冬囲いかもしれません。
でも、DIYで本棚や椅子などを作ったことのある人なら、それほど苦労はしないでしょう。縄での結束が難しい場合は、ネジや釘を使用してもかまいません。
杭の高さは、植込みよりも5~10cmほど上が目安です。四隅の杭の高さはすべて揃えても良いですし、うしろの2本を少し高くしても良いでしょう。
公園や庭園などでは、天面に竹を並べた棚囲いが見られますが、1本ずつ竹を結束していくのは労力のいる作業です。
DIYでの棚囲いには、すのこやむしろなどの利用をおすすめします。庭木への積雪を防ぎつつ、通気の邪魔をしない素材を選びましょう。
雪吊りの方法
雪吊りは、松やイチイなどに使用される冬囲いです。樹高が高く、枝の硬い庭木に適しています。
雪吊りは、次の手順で行いましょう。
①支柱の先端に吊り縄を数本結び付け、放射状に配置する
②庭木の主幹に沿うように支柱を立てる
③吊り縄で枝をくくる
支柱には、木の高さの1.5倍ほどの長さの竹や木材を使用します。支柱に結び付ける吊り縄は、支えたい枝の本数分用意しましょう。
支柱と幹は、縄で数カ所縛って固定します。吊り縄で枝をくくる際は、枝を持ち上げる気持ちで縛るのがポイントです。
雪の積もった枝をしっかり支えられるように、縄がピンと張るように設置しましょう。吊り縄の本数が多いほど、サポート力はアップします。
プロが設置するような華麗な雪吊りは、初心者には難しいかもしれません。でも、アウトドアでテントを設置するのが得意な人なら、きっとうまくできるでしょう。
幹のしっかりした庭木なら、雪吊りに似た「幹吊り」がおすすめです。幹吊りは、支柱を立てず幹に直接吊り縄を付ける方法で、「直吊り」とも呼ばれます。
吊り縄で枝をくくって支える方法は雪吊りと同じですが、支柱を立てない分手軽に行えます。
冬囲いや雪吊りにおすすめの縄の結び方
縄やロープの結び方にはいろいろなものがありますが、冬囲いには「男結び」がおすすめです。
強度が高く、結びやすくてほどきやすい結び方で、別名は「いぼ結び」。造園の基本とされる結び方で、竹垣作りにも使用されます。
しっかり結ぶにはコツがいるので、竹や丸木などをくくって練習しておくと良いでしょう。
縄の結びやすさは、素材によっても異なります。次は、冬囲いに使用する道具について説明していきます。
冬囲いや雪吊りに使用する道具の種類と特徴
冬囲いで使用する道具は、主に次の3種類です。
・結束に使う道具
・支柱として利用するもの
・風よけに使うもの
それぞれ詳しく見ていきましょう。
結束に使う道具
枝や支柱を縛る道具には、天然素材の荒縄や合成繊維のロープがおすすめです。
荒縄
荒縄は、わらを編んで作られる天然素材のロープです。
基本的にプロの業者が使用するのはこのタイプ。植物にダメージを与えにくいため、樹木に直接触れる縄巻には特に荒縄がおすすめです。
荒縄の太さは、わらじに使われる細いものからしめ飾り用の太いものなど幅広く揃っています。冬囲いには、6~9mmほどのものが使いやすいでしょう。
荒縄の表面はザラザラで、枝をまとめやすくなっています。でも初心者には、このザラザラが邪魔となり扱いにくく感じるかもしれません。
荒縄では結びにくいときは、合成繊維のロープを使用してみましょう。
合成繊維のロープ
合成繊維製のロープは、やわらかくてすべりの良いのが特徴です。比較的安価で軽く、強度にもすぐれています。
素材はいろいろありますが、冬囲いにはビニロンやポリエチレン、ナイロンなどが良いでしょう。
合成繊維製のロープは、以前は白やグリーンといった色がほとんどで、見た目で敬遠されることもありました。
近頃は天然のわらに似た色合いの商品も販売されており、見映えの点でのデメリットは解消されてきています。
支柱に使う資材
竹囲いや雪吊りなどの支柱には、竹や木材の使用がおすすめです。
竹
竹は、見映え抜群の天然素材です。木材より軽いのに強度に優れ、適度にしなって使いやすいため、造園作業ではよく使用されています。
種類はいろいろありますが、冬囲いには根曲竹や晒竹、女竹が人気です。雪吊りの支柱には太目の、竹囲いにはやや細めの竹が使いやすいでしょう。
木材
雪囲いの支柱には、丸木や角材のような木材も使用可能です。
ホームセンターにはさまざまな太さと長さの木材が販売されています。雪吊りや竹囲いには、庭木の高さの1.5倍の長さを目安に選ぶと良いでしょう。
風よけ用アイテム
風よけには、こもや麻布といった天然素材のほかに、合成繊維製の布やネットも適しています。
こも
こもとは、マコモやわらを編んだむしろのことで、ござや敷物にも使用されます。見た目の風情は抜群ですが、切ったり折ったりがしにくいため初心者には扱いにくいかもしれません。
また、ネットほど通気性が高くなく蒸れやすいため、根元まですっぽり覆うと庭木が蒸れてしまう可能性があります。こもで庭木を包むときは、根元から30cmほどの範囲は開けておくようにしましょう。
麻布
麻で織られた麻布は、ジュートクロスや麻むしろといった名称でも販売されています。
ざっくりとした織目で通気性は良く、見た目の雰囲気も悪くありません。カットしてもほつれにくいので、使いやすいサイズに切って利用できます。
寒冷紗(かんれいしゃ)
寒冷紗は、ポリエチレンやポリエステルで織られた布です。ガーデニングでは、害虫予防や紫外線予防など、いろいろな目的で使用されます。
ある程度の保温効果と保湿効果があり、通気性も良い寒冷紗。ホームセンターやネットショップだけでなく、100均でも購入可能です。
ネット
ポリエステルやナイロン製の園芸用ネットは、軽くて扱いやすいアイテムです。
冬囲い専用のネットも市販されていて、樹木の高さによっては支柱の上からすっぽりかぶせて使えます。
色合いはブルーやグリーン、白などで、こも巻きのような風情はないかもしれません。でも、雪が積もってしまえば見えなくなると、割り切って使用されている人もあります。
冬囲いを自分で行うなら、このような道具が必要です。くりかえし使えるものもありますが、毎年買い足さないといけない商品もあります。
また、冬囲いの必要がないシーズンには、どこかに収納しておかなければいけません。
道具を揃えたり、しまって置いたりといったことが煩わしいと感じるなら、業者に依頼してみてはいかがでしょうか。
次は、冬囲いを業者に頼んだ場合のメリットとデメリットについて説明していきます。
冬囲いを業者に依頼するメリットとデメリット
冬囲いを業者に依頼した場合の、メリットとデメリットを比較してみました。
まずはメリットから見ていきましょう。
メリット
・手間がかからない
・道具を揃えなくて良い
・見映え良く仕上げてもらえる
冬囲いを業者に依頼する一番のメリットは、手間がかからないことでしょう。
道具を揃えずに済むので道具代の節約になりますし、道具をしまい込んでおくスペースも必要ありません。
また、プロの手による冬囲いは美しく、庭を彩ってくれるでしょう。
デメリット
・希望の日に作業してもらえないことがある
・作業費用がかかる
冬囲いを依頼したいと思っても、業者とのタイミングが合わずなかなか作業に入れないこともあります。
また、費用がかかるのも大きなデメリットです。冬囲いの作業費用は、道具代より高額に違いありません。
では、具体的にはどのくらいの費用がかかるのでしょう?
次は、冬囲いの費用相場について分かりやすく解説していきます。
冬囲いや雪吊りの価格相場。業者に依頼した場合
まずは、冬囲いの価格の設定方法について説明します。
冬囲いの費用設定
冬囲いの価格は、基本的には次の3つのうちいずれかのパターンで設定されていることがほとんどです。
・庭木1本ずつの作業単価が決まっている
・「冬囲い」としてセット料金が設定されている
・時給や日給で計算する
近頃多く見られるのは、庭木1本ごとに作業単価が決まっているパターンです。作業単価は作業内容によって異なり、庭木の高さで価格が変わることもあります。
とはいえ、作業単価さえわかれば、ある程度の費用が想定しやすい計算法です。業者によっては作業単価を公式サイトで確認できますので、相場を掴むためにチェックしてみても良いでしょう。
また、冬囲いのセット価格を設定している業者もあります。このケースでは、庭全体の冬囲いの作業費用と、春先に行う冬囲い外しまでがセットとなっていることが多いようです。
こちらも価格の想定がしやすい計算法ですが、どこまでの作業が含まれているかは業者によって異なります。依頼前にきちんと確認しておきましょう。
業者1人当たりの時給や日給で計算方法では、作業人数が増えたり作業時間が伸びたりすると、その分費用が上がります。
業者の手際の良し悪しで価格が変わることもあり、相場を算出するのは難しいかもしれません。
冬囲いの費用相場の目安
冬囲いの費用相場は、次の通りです。
縄巻:2mまで300円/1本
2m以上500円/1本
竹囲い:2mまで700円/1本
2m以上1,000~2,000円/1本
こも巻き・ネット巻き:2mまで1,000円/1本
2m以上1,500円/1本
棚囲い:1,500円/1㎡
雪吊り:3mまで6,000~8,000円/1本
5mまで9,000~12,000円/1本
7mまで15,000~18,000円/1本
幹吊り・直吊り 3mまで3,000円/1本
5mまで5,000円/1本
7mまで9,000円/1本
こちらの価格は、あくまでも費用相場の目安です。
庭木の状態によっても価格が変わることもありますので、まずは業者に相談して見積もりを取ってみることをおすすめします。
まとめ
庭木のサイズや種類によっては、冬囲いを自分で行うことも難しくありません。
でも、樹高の高い庭木や枝の硬い樹種になると、なかなか大変な作業です。枝をまとめるには力がいりますし、縄の結びかたにはコツが必要です。
雪の重みに耐えかねて縄がほどけてしまったら、庭木を守り切れないかもしれません。
一方、業者に冬囲いを依頼すれば、庭木はしっかり守れるでしょう。でもその分、作業費用はかかります。
どちらにメリットが大きいかを判断するためには、まずは業者に相談してみてはいかがでしょうか。
納得いく冬囲いを行って、庭木の健康を守りましょう。