台風や強風によって庭木や近隣の樹木が倒れ、自宅の屋根や外壁、カーポートなどに被害が発生した場合、「修理費は誰が負担するのか」「木の所有者に賠償を請求できるのか」と疑問に思う方も多いでしょう。
実は、倒木による損害の責任は、樹木の管理状況や災害の規模によって判断が異なります。また、日頃から適切な樹木管理を行うことで、倒木事故や近隣トラブルのリスクを大幅に減らすことが可能です。
本記事では、倒木による家屋被害の責任の考え方や台風時の賠償責任の有無、さらに被害を未然に防ぐための予防策についてわかりやすく解説します。
隣家の倒木は誰の責任?

隣家の木が倒れて自宅や車に被害が出た場合、責任の所在は状況によって異なります。
台風や強風などの自然災害が原因で、樹木の管理に問題がなかった場合は、所有者に賠償責任が認められないケースが一般的です。一方で、枯れ木や傾いた木を放置していたなど、管理不足があった場合は、民法第717条に基づき隣人が賠償責任を負います。
被害を受けた際は、現場の写真を残し、加入している火災保険や専門家へ相談することが大切です。
占有者・所有者は責任を負わない
隣家の木が倒れて自宅や車に被害が生じた場合でも、必ずしも木の所有者が賠償責任を負うとは限りません。
民法第717条では、土地の工作物や樹木の管理に「瑕疵(安全性の欠如や管理不備)」があり、その結果として損害が発生した場合に責任が認められます。そのため、樹木が枯れていたり、大きく傾いていたりするなど危険な状態を放置していた場合は、所有者に損害賠償責任が生じる可能性があります。
一方で、適切に管理されていた樹木が、台風や強風などの自然災害によって予測困難な形で倒れた場合は、管理上の瑕疵がないと判断されることが一般的です。この場合、所有者は責任を負わず、被害を受けた側の火災保険などで対応するケースが多くなります。
「竹木の植栽・支持」に瑕疵がある場合は責任が発生する
民法第717条では、「土地の工作物」のほか、「竹木の植栽または支持」に瑕疵があり、その結果として他人に損害を与えた場合、土地の占有者や所有者が損害賠償責任を負うと定めています。ここでいう瑕疵とは、通常備えているべき安全性を欠いている状態を指します。
例えば、樹木が枯れている、幹が腐朽している、大きく傾いている、根元が浮いている、あるいは根元や幹にキノコが生えている(内部が腐朽しているサイン)など、倒木の危険性が認識できる状態であったにもかかわらず放置していた場合です。所有者が適切な伐採や剪定、支柱の設置など必要な対策を講じなかったとして「竹木の植栽・支持に瑕疵がある」と判断される可能性があります。
日頃から樹木の状態を点検し、危険が見つかった際に適切な管理を行うことが、事故防止と法的リスクの軽減につながります。
隣家の木が越境していても勝手に切るのはNG

民法第233条では、隣地から越境してきた木の枝について、土地の所有者が勝手に切ることは認められていません。そのため、隣家の木が自分の敷地にはみ出していても、無断で伐採や剪定を行うのは原則として避けるべきです。
まずは、木の所有者に枝の剪定や伐採を依頼し、適切に対応してもらうことが重要です。トラブルを防ぐためにも、事前に話し合いを行い、円満な解決を目指しましょう。
原則は相手に切ってもらう必要がある
民法第233条では、隣地から越境してきた木の枝について、土地の所有者が原則として勝手に切ることはできないと定められています。そのため、隣家の木の枝が自宅の敷地内にはみ出していても、無断で伐採や剪定を行うことは避けなければなりません。
越境した枝が建物や通行の妨げになっている場合は、まず木の所有者に対して剪定や伐採を依頼することが基本です。
所有者が対応しない場合には、法的な手続きによって解決を図ることになります。隣人トラブルを防ぐためにも、まずは話し合いによる解決を目指し、適切な手順で対応することが大切です。
隣家の「木の枝」を切り取っても良い場合
2023年4月の民法改正により、隣地から越境してきた枝は原則として所有者に切ってもらう必要があるものの、一定の条件を満たす場合には、被害を受けている土地所有者が自ら枝を切り取ることができるようになりました。(※木そのものを切り倒す「伐採」が認められたわけではないため注意が必要です)
例えば、枝の剪定を請求したにもかかわらず相当期間内に対応がない場合や、所有者が分からない、または急迫した危険があり、速やかな対応が必要な場合などが該当します。
ただし、いきなり切除するのではなく、まずは所有者への連絡や協議を行うことが重要です。それでも解決しない場合は、自治体の相談窓口や法律相談を利用したり、簡易裁判所の民事調停を申し立てたりする方法があります。
これらの手続きを通じて適切な解決を図ることで、不要な近隣トラブルや法的リスクを避けることができます。
倒木でケガをした場合の法的責任

隣家の木が倒れてケガをした場合、木の所有者に損害賠償責任が発生するかどうかは、樹木の管理状況が大きな判断材料となります。
民法第717条では、「竹木の植栽または支持」に瑕疵(管理上の欠陥)があり、その結果として損害が生じた場合、所有者や占有者が責任を負うと定めています。
例えば、枯れ木や腐朽した木、著しく傾いた木など、倒木の危険性を認識できる状態であったにもかかわらず、伐採や剪定などの必要な対策を怠っていた場合です。このような場合は、治療費や通院費、休業による収入減少(休業損害)などが賠償の対象となることがあります。
一方で、適切な管理が行われていた樹木が台風や強風などの予測困難な自然災害によって倒れた場合は、管理上の瑕疵がないとして責任が否定されるのが一般的です。
倒木被害の予防方法

枯れ枝の除去や、風通しを良くして風の抵抗を減らす「透かし剪定(枝抜き)」を年に1~2回行うことで、倒木リスクを大幅に軽減できます。ただし、樹種(常緑樹・落葉樹など)によって適切な剪定時期は異なり、間違った時期の強い剪定は木を弱らせ、かえって腐朽や倒木の原因になるため注意が必要です。
費用の目安は、剪定が1本あたり5,000円~5万円程度、伐採は2万円~20万円程度が一般的です。庭木の消毒は、1式1万円~が目安となります。
定期的な樹木の点検とメンテナンス費用は、木のボリュームや現場の状況により大きく変わりますので、事前に造園会社や樹木医に相談しましょう。
庭木のメンテナンス
倒木被害を予防するためには、庭木の定期的なメンテナンスが欠かせません。
樹木は成長とともに枝葉が増え、強風時に大きな負荷がかかるため、年に1~2回を目安に剪定を行い、不要な枝や枯れ枝を取り除くことが大切です。また、幹の腐朽や空洞化、根の浮き上がり、病害虫の発生などがないか定期的に点検しましょう。
特に台風シーズン前には樹木の状態を確認し、倒木の危険がある木は早めに伐採や支柱の設置を検討することが重要です。樹高が高い木や老木は造園業者による診断を受けると安心です。
日頃から適切な管理を続けることで、倒木による住宅や車への被害、近隣トラブルのリスクを大幅に減らすことができます。
台風時は支柱で固定
台風による倒木被害を防ぐためには、樹木を支柱やワイヤーでしっかり固定することが有効です。特に植栽後間もない若木や根の張りが弱い樹木は、強風の影響を受けやすいため注意が必要です。
植栽時や若木には一本支柱や三脚支柱、八つ掛け支柱などを設置し、すでに成長した大きな木を補強する場合には、ワイヤーロープ(控え綱)を張るなどの対策をとります。樹木の大きさや設置場所に応じて適切な方法を選びましょう。
支柱と幹を結束する際は、幹を傷つけないよう専用の結束材を使用し、定期的に緩みや劣化がないか確認します。
また、支柱だけに頼るのではなく、事前の剪定で枝葉の量を調整し、風の抵抗を減らしておくことも重要です。
台風シーズン前には固定状況を点検し、必要に応じて補強を行うことで、倒木や枝折れによる被害のリスクを大幅に軽減できます。
倒木被害は火災保険で補償できる場合がある

台風や大雪などで敷地内の木が倒れ、建物被害が発生した場合は火災保険の「風災・雹(ひょう)災・雪災補償」で損害が補償されることがあります。被害状況のわかる写真や損害の起きた日時を押さえたうえで、保険会社に相談してみましょう。
隣の家から倒れてきた木で自宅が壊れた場合も、原則として自分の火災保険を使います(法律上、不可抗力の災害は隣人に賠償請求できないため)。一方、自分の木が他人の家を壊した場合は、特約の「個人賠償責任保険」や「建物管理賠償責任補償」などでカバーできることがあります。
ただし、経年劣化による倒木や、建物に被害がなく「木が倒れただけ(撤去費用のみ)」のケースは補償対象外となることが多い点に注意が必要です。
よくある質問

倒木は誰の責任?
倒木の責任は、原則としてその樹木が生えている土地の所有者が負うのが一般的です。
民法第717条に基づき、所有者には樹木を安全に管理する義務があります。そのため、枯れ木や管理不足の木が倒れて他人に損害を与えた場合、所有者が賠償責任を負わなければなりません。
ただし、日頃から適切な点検や剪定を行っていたにもかかわらず、想定外の台風や地震などの「不可抗力」によって倒れた場合に限り、責任を免除されることがあります。
道路上にはみ出した木は誰の責任?
道路上にはみ出した木の管理責任は、原則としてその木の所有者にあります。
敷地内の樹木であっても、枝や幹が道路にはみ出して通行の妨げになったり、落枝や倒木によって事故が発生したりした場合は、所有者が責任を問われる可能性があります。
特に、枯れ枝や傾いた木を放置していたなど管理不足が認められる場合には、損害賠償責任が発生することもあります。安全確保のため、定期的な剪定や点検を行うことが重要です。
まとめ

倒木による家屋被害の責任は、樹木の所有者に管理上の過失があったかどうかで判断されます。枯れ木の放置や適切な剪定を怠っていた場合は、損害賠償責任を負う可能性があります。
一方、台風や暴風など予測困難な自然災害による倒木は「不可抗力」とされ、所有者が責任を負わないケースも少なくありません。
被害に備えるためには、定期的な点検や剪定、枯れ枝の除去、支柱設置などの日常的な管理が重要です。また、火災保険や風災補償の内容を確認しておくことで、万が一の損害にも適切に対応できます。












