空き家に放置された庭木が隣地や道路へ越境している場合、「勝手に切ってもよいのか」「所有者が不明なときはどう対応すればよいのか」と悩む方も多いでしょう。
2023年の民法改正により、一定の条件を満たせば越境した枝を自ら切除できるケースが認められるようになりました。一方で、無断で伐採すると違法となる場合もあるため注意が必要です。
本記事では、空き家の庭木に関する法的ルールや2023年民法改正のポイント、越境トラブルへの適切な対処法についてわかりやすく解説します。
空き家の庭木放置のリスク

庭木や庭の管理を放置すると、防犯上のリスクや害虫の発生、景観の悪化、ご近所トラブルの要因になるため、所有者による適切な管理が求められます。これは、空き家の所有者も同様で、適切な庭の維持管理という責務が伴います。
ここでは、空き家の庭木放置のリスクについて、4つのポイントでくわしく解説しますので参考にしてください。
安全上の問題
- 害虫の発生
手入れされていない庭木や雑草は、蚊・ハチ・毛虫などの害虫の発生場所になりやすいです。特に夏場は繁殖が活発になり、刺傷や健康被害につながるおそれがあります。 - 害獣の住みつき
生い茂った庭木は、ネズミやハクビシン、野良猫などの隠れ場所になります。害獣が住みつくと、騒音やふん尿被害だけでなく、建物の劣化や衛生環境の悪化を招く原因となります。 - アレルギー被害の拡大
庭木や雑草が放置されると、花粉や胞子が大量に飛散することがあるので注意が必要です。花粉症や喘息などのアレルギー症状を悪化させる要因となり、近隣住民にも影響を及ぼす可能性があります。 - 感染症リスクの増加
害虫や害獣が増えることで、病原菌やウイルスを媒介するリスクも高まります。特に蚊やネズミは感染症の原因となることがあり、衛生管理上の問題とされることが多いです。 - 悪臭や排水設備の詰まりなど生活環境の悪化
落ち葉や枯れ枝が堆積すると、湿気を含んで腐敗し、悪臭やカビの発生につながりやすいです。また、大量の落ち葉が近隣住宅の雨樋(あまどい)や道路の排水溝に詰まることで、雨漏りや水あふれなどの建物被害を引き起こす原因にもなるため注意が必要です。
事故のリスク
- 枝折れ・落下事故
管理されていない庭木は、枯れ枝や弱った枝が増えやすいです。強風や積雪の際に枝が折れて落下し、人や車に当たる事故につながるおそれがあります。 - 倒木による物損事故
老木や病害虫の被害を受けた樹木は倒木しやすくなります。台風や大雨で倒れた木が住宅やカーポート、フェンスなどを破損し、高額な修繕費が発生することもあるでしょう。 - 通行人のケガ
道路や歩道へ枝が張り出していると、歩行者や自転車利用者が枝に接触してケガをする危険があります。特に夜間は視認しづらく、事故につながりやすいです。 - 交通事故の発生
繁茂した庭木が道路標識やカーブミラー、信号機などを隠してしまうと、ドライバーの視界が妨げられます。その結果、接触事故や追突事故の原因となる可能性があります。 - 電線・設備への接触事故
伸びた枝が電線や通信線に接触すると、停電や通信障害を引き起こすことがあります。場合によっては火花や発熱による火災の原因となるため、定期的な剪定と点検が重要です。
治安に関するリスク
- 不審者の侵入を招く
庭木が伸び放題になると、敷地内の見通しが悪くなります。外部から人の出入りが見えにくくなるため、不審者が身を隠しやすい環境となり、無断侵入や不法占拠のリスクが高まります。 - 空き巣や窃盗の標的になりやすい
管理が行き届いていない空き家は「人の目が届いていない」と判断されやすく、空き巣や金属類の盗難被害の対象になることがあります。庭木が建物を覆うほど繁茂すると、犯行が発見されにくくなる点も問題です。 - 不法投棄を誘発する
雑草や庭木が生い茂った空き家は管理不足の印象を与えます。その結果、ごみや粗大ごみの不法投棄が行われやすくなり、景観悪化だけでなく衛生環境の悪化にもつながります。 - 放火のリスクが高まる
枯れ枝や落ち葉が大量に堆積すると燃えやすい状態となり、放火の標的になる危険性が高いです。火災が発生した場合は近隣住宅へ延焼するおそれもあります。
特定空家への認定
空き家の庭木を長期間放置すると、自治体から「特定空家等」に認定されるリスクがあります。特定空家等とは、適切な管理が行われておらず、周辺住民の安全や生活環境に悪影響を及ぼしている空き家のことです。
庭木が著しく繁茂して道路や隣地へ越境している場合や、枯れ木が倒木の危険を生じさせている場合、害虫・害獣の発生源となっている場合などは、認定の判断材料となる可能性があります。
特定空家等に認定されると、自治体から助言・指導、勧告、命令といった段階的な措置を受けます。
特に勧告を受けると、住宅用地に適用されている固定資産税の軽減措置が解除され、固定資産税や都市計画税の負担が大幅に増加する場合があるので注意が必要です。
さらに、命令にも従わない場合は行政代執行が実施され、自治体が所有者に代わって庭木の伐採や建物の解体を行い、その費用が所有者へ請求されます。空き家の管理責任を果たし、定期的な剪定や点検を行うことが重要です。
2023年4月の民法改正による伐採の新ルール

空き家の庭木が隣地や道路へ越境している場合、以前は原則として所有者に剪定や伐採を求めるしかなく、対応が進まないケースが少なくありませんでした。
しかし、2023年4月の民法改正により、一定の条件を満たせば越境された側が自ら枝を切り取れるようになり、空き家の管理問題への対応がしやすくなっています。
ここでは、改正民法第233条の概要と従来ルールとの違い、空き家の庭木管理に関係する重要な変更点について解説します。
民法改正前の概要
2023年4月の民法改正前は、隣地の木の枝が自分の敷地へ越境していても、土地の所有者が勝手に枝を切り取ることは認められていませんでした。民法第233条により、越境した枝については樹木の所有者に剪定や伐採を請求する必要があり、相手が対応しない場合でも自力で切除することは原則できなかったのです。
そのため、空き家の庭木が長期間放置されているケースでは、所有者と連絡が取れない、相続人が不明である、遠方に居住しているなどの理由から問題が解決しないことが多くありました。越境した枝が隣家の屋根や外壁に接触したり、落葉や害虫の発生原因になったりしても、迅速な対応が困難だったのです。
また、所有者が対応を拒否した場合には、裁判や調停などの法的手続きが必要になることもあり、時間や費用の負担が大きな課題となっていました。そのため、空き家の増加に伴う越境トラブルへの対応を円滑化するため、2023年の民法改正が行われることとなったのです。
民法改正後の変更点
2023年4月の民法改正により、空き家の庭木が隣地へ越境している場合の対応が大きく見直されました。従来は、越境した枝であっても隣地の所有者が自ら切り取ることは原則として認められず、樹木の所有者に剪定や伐採を求める必要がありました。
しかし改正後は、一定の条件を満たす場合に限り、越境された側が自ら枝を切り取ることが可能となっています。
具体的には、枝の所有者に切り取ることを求めたにもかかわらず「相当の期間」内に対応が行われない場合や、所有者が不明・所在不明で連絡が取れない場合、さらに急迫した危険があり早急な対応が必要な場合などが対象です。
この改正法の「隣地使用権」や「共有物対応」により、空き家の放置庭木による近隣トラブルや安全上の問題を早期に解消しやすくなっています。そのため、土地所有者の負担軽減と地域の安全確保につながる制度へと改善されています。
なお、切り取ることができるのは越境した枝に限られ、幹や根の取り扱いとはルールが異なるため注意が必要です。
以下では、今回の法改正に関連する重要なキーワードについて、その定義と概要を解説します。
「相当の期間」とは
2023年4月施行の改正民法では、越境した枝を切り取ることを所有者に求めたにもかかわらず「相当の期間」内に対応がない場合、自ら枝を切り取ることができると定められています。この「相当の期間」に明確な日数の規定はありませんが、一般的には枝の量や作業の難易度、所有者の事情などを考慮して判断されます。
実務上は、書面などで切り取ることを求めたうえで、一般的には2週間程度の猶予を設けるケースが多いです。ただし、倒木や枝落下の危険が差し迫っている場合は、より短期間で判断されることもあります。
「隣地使用権」とは
隣地使用権とは、建物の修繕や庭木の剪定・伐採などを行う際、自分の土地だけでは作業ができない場合に、必要な範囲で隣地を一時的に使用できる権利です。
2023年4月の民法改正でルールが明確化され、原則として事前に隣地所有者へ通知することで立ち入りが可能となりました。ただし、使用は必要最小限に限られ、隣地に損害を与えた場合は補償が必要です。
空き家の庭木の管理や越境枝の切除を円滑に進めるための重要な制度です。
「共有物の管理ルールの見直し」とは
共有物の管理ルールの見直しとは、複数人で所有している土地や建物(共有物)について、管理や利用に関する意思決定をしやすくするための制度です。
2023年4月の民法改正では、共有者の一部が所在不明であったり意思表示できなかったりする場合でも、裁判所の手続きを利用して管理行為や処分を進めやすくなりました。
空き家では相続によって所有者が複数人になるケースが多く、庭木の剪定・伐採や敷地管理が滞ることがあります。改正により、所在不明の共有者がいることで管理が進まない問題の解消が期待されています。
伐採費用は空き家の所有者に請求できる

越境した庭木の伐採や枝の切除に要した費用は、一定の条件を満たす場合、木の所有者に請求できる可能性があります。たとえば、所有者に対して事前に剪定・伐採を求めたにもかかわらず対応が行われず、その結果としてやむを得ず自ら費用を負担して対処した場合などです。
ただし、費用を請求する前に、まずは所有者へ書面で対応を求めることが重要です。
電話や口頭だけでなく、内容証明郵便など記録が残る方法で通知しておくと、後日のトラブル防止につながります。また、越境状況の写真や伐採前後の記録、業者の見積書・領収書なども保管しておきましょう。
無断で幹を伐採したり、樹木そのものを切り倒したりした場合は、かえって損害賠償を請求されるおそれもあるため注意が必要です。
所有者と連絡が取れない場合や費用負担を巡って争いがある場合は、自治体の相談窓口や弁護士への相談も検討するとよいでしょう。
▶ 【法務省公式PDF】隣の土地から木の枝が境界を越えて出てきたら(民法第233条の改正)
空き家の伐採はプロに依頼するのがおすすめ

空き家の庭木や越境木の伐採は、造園会社などのプロへ依頼することをおすすめします。
空き家の庭木は長期間管理されていないことが多く、樹木が大きく成長していたり、枯れや腐食によって倒木の危険が高まっていたりするためです。
無理に自分で伐採を行うと、高所からの転落やチェーンソーによる事故、隣家や電線への損傷などのリスクがあります。
プロの業者であれば、樹木の状態や周辺環境を確認したうえで、安全な方法で作業を実施できます。また、重機や専用機材を使用できるため、大木や狭い場所での伐採にも対応可能です。
さらに、伐採後の枝葉や幹の処分、切り株の撤去までまとめて依頼できるため、管理負担の軽減にもつながります。
よくある質問

空き家の庭木は勝手に伐採して良い?
空き家の庭木であっても、原則として所有者の許可なく勝手に伐採することはできません。樹木は土地や建物と同様に所有者の財産であり、無断で切ると損害賠償を請求される可能性があります。
ただし、庭木の枝が隣地へ越境している場合は、2023年4月の民法改正により、一定の条件を満たせば越境された側が自ら枝を切り取ることができる場合があります。
まずは所有者の確認や連絡を行い、対応が難しい場合は自治体や専門家へ相談することが重要です。
空き家の庭木を放置するのは危ない?
空き家の庭木を放置すると、さまざまな危険が生じます。枝や樹木が成長して道路や隣地へ越境すると、通行の妨げや近隣トラブルの原因になります。
また、台風や強風で枝折れや倒木が発生し、人や建物に被害を与えるおそれもあります。さらに、庭木が繁茂すると不審者の侵入を招きやすくなり、害虫や害獣の発生源となることもあります。
安全面・衛生面・防犯面の観点から、定期的な剪定や伐採による適切な管理が重要です。
まとめ

本記事では、空き家の庭木を所有者以外が勝手に伐採することは原則として認められず、民法上のルールに従う必要があることを解説しました。
特に2023年の民法改正により、隣地へ越境した枝については一定の条件を満たせば自ら切除できるようになりました。
一方、幹を勝手に伐採することは認められておらず、枝や根とはルールが異なるため注意が必要です。
放置された庭木は倒木や近隣トラブルの原因となるため、早めの管理が重要です。法改正の内容を正しく理解し、所有者への連絡や適切な手続きを踏みながら、安全かつ円満に問題を解決しましょう。











